パプキム天国

ただのおぼえがき

「外国人不可」物件は、単純な差別とはまた別の社会構造の問題でもあるよねっていう話

 

 「外国人不可」物件について、いろいろと話題になっているようで。

 法務局仕事しろとか差別主義クソ大家はうんこにでも住んでいろとか、そういうことも勿論思うのですが、同時に、単純な差別とはまた別の、社会構造の問題でもあるよね、と思うんです。

 

日本の賃貸制度は、貸主側のリスクが大きすぎる

 日本の賃貸制度は、借主側というか家賃滞納している人間に対して、かなり甘いです。どんくらい甘いかというと、3ヶ月家賃を滞納しなければ、大家側は裁判に持っていけないくらいに甘いです。しかも、その裁判を起こすにも時間が掛かるし、費用も掛かる。挙句には、大家が滞納者の引越し代を負担するという理不尽なこともあります(退去の強制執行費用より安く済むから、仕方なく負担する)。

 つまり、滞納者は、合計で家賃約半年分と裁判費用、引越し費用を踏み倒せるくらいの権限(みたいなもの)を持っているわけです。

 ちなみに、アメリカだと1ヶ月ですぐに追い出されるしお隣の韓国だと2ヶ月で明け渡し請求をすることができます。翻訳

 まあ、日本では「住居」が基本的人権と深く関わると考えられているから、退去させるのに時間が掛かって当然という見方もあるのですが、個人的にはそれは本末転倒になっていると思います。理由は後述。

  とにかく、これくらい、貸主側のリスクが大きいんです。そうなると、大家も慎重になって、当然ながら入居審査も厳しくなるわけです。それに伴って、知能が低くて人格も歪んているような大家が「外国人不可」なんていう差別をし始めます。*1*2

  勿論、制度が変わって、貸主側のリスクが減ったとしても、こういう差別がなくなるわけじゃないでしょうが、リスクが減少すれば差別する理由も少なくなるわけですから、現状よりはマシになるでしょう。

 

 

セーフティネットが機能していない

 家賃を滞納する理由というのは、客観的なデータを見たことがないので、私の知っている範囲でしか語れませんが、失職したりうつ病を患ったり莫大な借金を背負ったり、と、やむを得ない事情があって「支払いたくても支払えない」という人が多いようです。

 ここで私が言いたくなるのは、早く生活保護を受けろよ、ということ。家賃を滞納してしまうくらいに生活が困窮しているのならば、ほぼ確実に生活保護を受けられます。人間なら、私も含めて誰だって、人生の中で不幸にあう可能性はあります。だから、恥ずかしいことじゃないから、生活保護を受けてほしいと。

 でも、意固地になって、生活保護だけは受けたくないとか親戚に知られたくないとかの理由で、生活保護を受けない人達がいます。何も悪くない大家に迷惑を掛けるくらいなら、国が保障をせっかく準備しているんだから、それを利用しろよと思うのですが、なかなか動いてくれないんですよね。大家からしたら、最悪な住居人でしょう。

 事情があって滞納している人は早く生活保護を申請して下さいね。

 でも、この話に限っては、一方的に滞納者が悪いというわけでもなくて、「生活保護バッシング」に現れているような日本の社会の風潮が、家賃滞納者のこのような態度を助長させているとも思います。全受給者の中の1%2%の不正受給者を叩くのもまあいいけれど、それなら70%〜80%とも言われている、実際は生活保護を受けられるはずなのに、受けていない人の割合、いわゆる漏給率をもっと問題視してほしいですよね。

 生活保護を受けるべき人が受けられる社会にしていけたら、家賃滞納者もぐっと減るのではないでしょうか。同時に、貸主側のリスクも減るわけですから、差別も減るんじゃないかと思います。

 

滞納者の引越し先が決まらない

 論理が循環する部分もあるのですが、入居審査が厳しいために、滞納者がすぐに引っ越ししてくれない、だから貸主のリスクが高くなっているという現状もあります。

 悪名高き「連帯保証人制度」が一般的だった頃は、大家自身が入居審査をすることが多かったので、大家によっては簡単に借りられることもありました。ですが、今はこんな古臭い制度を利用している大家は少数派で、賃貸保証会社に審査を委託している人が大半です。

 当然、保証会社の審査のほうが大家個人で行う審査より厳しくなります。特に、前述したような「家賃半年分+裁判費用+引越し費用」という高いリスクがあるので、年を追うごとに賃貸保証サービスが成熟して、審査が厳しくなってきています。2010年からは賃貸保証会社同士でデータベースを共有して、お互いにリスクを減らそうという動きもあります。

 このような状況なので、一回滞納したというデータが残ってしまった人は、なかなか審査が通らなくなってきています。

 今のところ、「連帯保証人制度」を利用している大家を探したり、俗に言うアリバイ会社なんていうヤクザなサービス(架空の会社に勤めていることにしてくれるサービス)を利用して保証会社を欺いたりすれば、倫理的には問題がありますが、部屋を借りられなくはない状況のようです。だけれども、時間が経てば、これらの抜け道もなくなるでしょう。

 そうなれば、結果的に引っ越しができずに、滞納している住居に居座ってしまう人も増えていくことが予測できます。そして、さらに貸主側のリスクが高まり、入居審査が厳しくなる、差別も増える、という悪循環が起こるでしょう。

 

 前述したように、日本の賃貸制度は、「住居が基本的人権に関わるから大事」という理由で、表面的には滞納者に甘い制度です。しかし、実際は貸主のリスクが増えて貸し渋りが起きる、滞納者の新しい住居がなかなか定まらなくなる、という本末転倒な状況になっているわけです。

まとめ

 賃貸における差別をなくすには、法務局は仕事しろということと同時に、社会構造を変えていくこと、つまり、滞納者に甘い賃貸契約の制度を見直すこと、生活保護の漏給率を改善することなどが必要だと、私は思います。

 

 

 

*1:外国人はリスクが高いから、断る権利があるのは当然だ、という意見もありますが、そもそも外国人のリスクが高いというデータがどこにあるのでしょうか。もし、あったとしても、「外国籍」という理由ではなく、その個人の資質で判断されるべきでしょう。

*2:参照:http://allabout.co.jp/gm/gc/30966/